Specified Metal Item 特定金属くず買受業

特定金属くず買受業

特定金属くず買受業の届出:令和8年6月1日から受付

特定金属くず買受業の届出が6月1日から始まりました。新規開業する特定金属くず等を扱う買取業者は営業開始前までに、既存の業者についても令和8年8月31日(経過措置期限)までに届出を行う必要があります。
特定金属くず買受業者には大きく4つの義務が課されます。
義務の名称主な内容・要件
1 特定金属くず買受業の届出 特定金属くず買受業を営もうとする場合、営業開始の前日までに営業所の所在地を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会へ届け出る義務。氏名、住所、営業所の名称・所在地、保管場所の所在地等が届出事項となる。
2 本人確認 買受けの相手方の氏名、住居、生年月日等の本人特定事項を確認する義務。原則として運転免許証やマイナンバーカード等の顔写真付き本人確認書類の提示を受ける。2回目以降の取引で口座振込の場合などは免除される特例がある。
3 取引記録の作成・保存 買受けを行った際、相手方の氏名・名称、買受けの日付・時刻、物品の量・価額、支払方法等の記録を直ちに作成し、3年間保存する義務。本人確認記録も同様に作成・保存が必要。
4 警察官への申告 買受けに係る特定金属くずが盗品(盗難特定金属製物品)に由来するものである疑いがあると認めたとき、直ちに警察官にその旨を申告する義務。
届出が必要な特定金属くず買受業とはどのような業態か、規制が導入された背景と新法により導入された義務などについて見ていきます。

金属盗難の現状と新法の誕生

近年、太陽光発電設備からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗が激増し、国民経済に甚大な影響を及ぼしています。こうした深刻な情勢を背景に、令和7年6月、特定金属製物品の窃取を防止することを目的とした「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗難対策法)」が制定されました。
令和7年 金属盗難対策が本格化
本記事で解説する「特定金属くず買受業」の規制は、この法律の柱となるものです。事業者の皆様にとって、これまでの商習慣を根本から見直すべき「遵守事項(コンプライアンス)」を解説します。

特定金属くず:銅

新法において規制対象となる「特定金属くず」の定義は、「主にで構成されている金属くず」と明確に定められています。(「特定金属」とは、金属盗対策が特に必要な金属として法律で指定されたものであり、 現時点で該当するのは “銅のみ”、しかし、銅の重量又は価額の50%以上を占める場合、銅とみなされますので銅の含有率が50%を超える真鍮や青銅などのスクラップも対象です。)
製品として利用可能なもの=「中古」、「古物」に該当する場合は特定金属くずではありません。 以下の物品が具体例として挙げられています。
  • 壊れたエアコンの室外機
  • 切断された金属ケーブル
  • グレーチング など
これらは素材価値が高いため、窃盗犯による換金目的の持ち込みが絶えません。新法の真の狙いは、これらの買い受けに厳格な義務を課すことで「窃盗犯人による盗品の換金を困難にさせる」ことにあります。市場から「盗品の出口」を奪うことが、犯罪抑止の根幹となります。

新規開業:営業開始の「前日まで」に届出

特定金属くず買受業を営むにあたり、最も基本的な義務が「事前の届出です。 特定金属くず買受業を営もうとする場合は、営業開始届出書を営業開始の前日までに、営業所を管轄する警察署に届け出る必要があります。
「営業を開始してから報告すればよい」という猶予は一切ありません。未届での営業は直ちに法令違反となり、後述する重い罰則や行政処分の対象となるため、準備段階での確実な対応が求められます。

既存の買取業者:経過措置期間あり

施行日にすでに営業を行っている既存業者の方であっても、営業を継続するためには都道府県公安委員会への届出が必要です。
令和8年8月31日までの経過措置期間を設けています。
 ただし、本人確認や取引記録の作成等の措置について猶予期間はなく、開始届出の有無に関わらず、特定金属くず買受業を営む者は、令和8年6月1日からこれらの措置を履行しなければなりません。
届出先 営業所の所在地を管轄する警察署
届出単位営業主体(個人・法人)ごとに、各営業所単位で必要

変更届

氏名や名称、代表者、保管場所の所在地などに変更があった場合は、変更の日から14日以内(登記事項証明書を添付する場合は20日以内)に届け出なければなりません。

古物商許可を持っていても別途届出が必要

古物商許可を持っていても別途届出が必要です。
古物商許可は「本来の用途で使える中古品(古物)」を売買するための許可ですが、特定金属を買い受ける業者は、金属盗難対策法に基づく届出が別途必要となります。

届出をしない場合の罰則

特定金属くず買受業の届出をせずに営業を行った場合(無届営業)、「6カ月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金(または併科)」という非常に重い罰則が科される可能性があります。

「名義貸し」は即、処罰の対象。営業所の移転も「新規届出」が必要

届出は営業主体(個人・法人)が営業所ごとに行う必要があり、他者への名義貸しは厳格に禁じられています。特に事業者が陥りやすい「手続きの罠」が2点あります。
法人化による再届出 個人事業主が法人化する場合、営業は継承できず、改めて新規の届出が必要
所在地の変更営業所の所在地を変更する場合、単なる「変更届」では足りません。「新たに当該営業所の所在地を管轄する警察署に営業開始届出書を提出」する必要
これらの義務に違反した場合、「6ヶ月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」が科される可能性があるだけでなく、事業の継続を危うくする「行政処分」の対象となります。許可や届出に基盤を置くビジネスにおいて、これは致命的なリスクです。

本人確認は「相手が法人の場合」がもっとも複雑

買い受け時の「本人確認義務」は、本制度において最も実務負担の重い箇所です。特に相手が法人の場合、確認項目が二重になる点に注意が必要です。
  • 取引担当者(自然人)の確認: 窓口に来た担当者本人について、運転免許証やマイナンバーカード等の「顔写真付き本人確認書類」による確認が必須
  • 法人の本人確認: 担当者の確認とは別に、「登記事項証明書」や「印鑑登録証明書」の提示、あるいは法人番号公表サイトでの確認等、法人自体の実在証明が必要
一方で、非対面取引においては本人確認書類と本人の顔写真を送信させるなどのデジタル運用も認められており、利便性と厳格性の両立が図られています。

すべての取引記録は「3年間」の保存義務

義務は確認だけにとどまりません。事業者は「本人確認記録」と「取引記録」を適切に作成し、3年間保存しなければなりません。ここで重要なのは、「過去に確認済みの相手であっても、取引の都度、取引記録を作成する必要がある」という点です。記録すべき事項は以下の通りです。
  • 相手方の氏名又は名称
  • 買受けの日付及び時刻
  • 特定金属くずの特徴、量、価格
  • 代金の支払方法(振込の場合は口座情報等)
  • これらの記録はPC等による電磁的記録での保存も認められていますが、立入検査時に即座に提示できる体制を整えておくことが、コンプライアンス遵守の絶対条件です。

    「怪しい」と思ったら即通報

    事業者は単なる民間業者ではなく、金属盗難を防ぐための「ゲートキーパー(門番)」としての役割を法的に期待されています。資料の「法の目的」にある通り、窃盗犯の「処分意欲(犯罪動機)」を削ぐことが重要です。 そのため、以下の「チェックポイント」に該当し、盗品の疑いがあると認めたときは、直ちに警察官へ申告する義務があります。
    • 公安委員会から提供された被害情報と、物品の種類や量が一致する場合
    • 初めて取引する個人が、一度に大量の特定金属くずを持参した場合
    • 本人確認書類に不自然な点(改ざんの跡など)がある場合
    この申告義務を怠ることは、結果として犯罪に加担することと同義とみなされ、業者としての信頼を失うことにつながります。

    Webサイトへの情報表示。5人以下の小規模店以外は必須

    透明性の高い営業を担保するため、標識の掲示に加え、自社ウェブサイトへの情報表示も義務化されています。表示すべきは以下の3項目です。
    1. 氏名又は名称
    2. 届出をした公安委員会
    3. 届出番号
    ここで注意すべきは免除規定の解釈です。「従業者数が5人以下」であれば免除されますが、この「従業者」には、パート・アルバイトだけでなく、経営者や役員も含まれるのが一般的です。自社の規模を正確に把握し、義務の有無を判断してください。ウェブサイトを有しているにもかかわらず表示を怠れば、当然ながら指導や処分の対象となります。

    まとめ

    令和7年6月に制定された「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」は、単なる規制強化ではありません。悪質な業者を排除し、ルールを守る正当な事業者を守るための盾となる法律です。

    これら一連の遵守事項を徹底することは、短期的には事務負担の増加を招くかもしれません。しかし、適切な本人確認と記録保存を行い、警察との連携を密にすることは、貴社の社会的信頼を揺るぎないものにします。自社の業務フローを精査し、クリーンな金属リサイクル市場の担い手として備えを確認しましょう。

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