Freight truck transportation business 一般貨物自動車運送

青ナンバー問題

「青ナンバー問題」とは

(通称:白ナンバー問題)

白ナンバー(自家用自動車)」のトラックを使い、有償で他社の産業廃棄物を運搬する光景は、現在でも見られます。

しかし、以下のようなケースでは「青ナンバーが必要では?」という疑義が生じます: - 産廃業者が有償で他人の廃棄物を運搬している - 廃棄物に有価物が混在している(例:金属くず) - 建設業者が資材と廃棄物を同時に運搬している このような状況で、貨物自動車運送事業法の適用対象になるか否かが争点となり、業界では「青ナンバー問題」と呼ばれています。

この問題の根幹には、廃棄物処理法と貨物自動車運送事業法という2つの法律の管轄の違いと、歴史的な業界慣習が深く関わっています。

国交省の見解

当該運送行為が自己の生業と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる場合は、当該運送行為が主要業務の過程に包摂しているものと認められ、貨物自動車運送法上の許可等を要しない こととしています。

基本的な考え方であって、密接不可分な割合が具体的に示されているわけではありません。

運送事業以外の事業に付帯して密接不可分のものとして行われるものであるかどうか、有償性を有するものであるかどうか等については、個々の事案ごとに判断することになります。

関連する法律

この問題を理解するには、2つの主要な法律を理解する必要があります。

法律名 貨物自動車運送事業法 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
(廃棄物処理法)
目的 貨物(モノ)の「運送」を規律する 廃棄物の「処理(収集、運搬、処分など)」を規律する
管轄 国土交通省 環境省
必要な許可 一般貨物自動車運送事業許可 産業廃棄物収集運搬業許可
車両 緑ナンバー(事業用自動車) (車両の色の規定はない)

ポイント: * 他人の貨物を有償で運ぶ「運送業」は、国土交通省の管轄です。 * 廃棄物を適切に処理するための「処理業」は、環境省の管轄です。

産業廃棄物の収集運搬は、この両方の性質を併せ持つグレーゾーンとして長年存在してきました。


歴史的背景と問題の発生

黎明期〜黙認時代

かつて、産業廃棄物の収集運搬は「汚物を清掃・処理する作業」という側面が強く見られていました。そのため、多くの事業者は環境省(当時は厚生省)の管轄である「産業廃棄物収集運搬業許可」さえ取得すれば、自社の白ナンバートラックで他社の廃棄物を運搬しても問題ない、という認識で事業を行っていました。

行政側も、廃棄物行政の黎明期であったことや、運送業としての監督よりも廃棄物の適正処理を優先していた背景から、これを事実上黙認している状態が長く続きました。

規制強化への転換

しかし、時代が進むにつれて、以下のような問題が顕在化しました。

  1. 安全性の問題:
    • 緑ナンバーの運送事業者には、運行管理者や整備管理者の選任、ドライバーの労務管理、点呼の実施など、輸送の安全を確保するための厳しい義務が課せられています。
    • 一方、白ナンバー事業者にはこれらの義務がなく、過積載や過労運転などの温床となり、事故のリスクが高いと指摘されるようになりました。
  2. 公正な競争の阻害:
    • 厳しい規制とコストを負担している緑ナンバー事業者から見れば、規制の緩い白ナンバー事業者が同じ市場で競争するのは不公平である、という声が高まりました。
  3. 法解釈の明確化:
    • 国土交通省は「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」を一般貨物自動車運送事業と定義しています。廃棄物も法律上「貨物」の一種であり、他社の廃棄物を運賃をもらって運ぶ行為は、この定義に明確に合致します。

これらの背景から、国土交通省は関係省庁との連携のもと、「産業廃棄物収集運搬も貨物自動車運送事業法の規制対象である」という解釈を明確にし、白ナンバー事業者への監視と指導を強化する方針に転換しました。

経緯

1977年(S52年)
9月8日
東京都陸運局は自動車第二部長名で埼玉県陸運事務所長宛に文書  「産廃収集運搬業者は一般貨物自動車運送事業法の許可(要するに青ナンバー)を取得するように」
1991年(平成3年) 廃棄物処理法改正 
1993年(平成9年)
6月4日
収集運搬と処分業の区分が明確になったことから、東京都陸運局は、1977年に出した判断を廃止
新たな基準として『自ら処理施設を有していない場合は、貨物運送事業の許可が必要』との事務連絡を、管内陸運支局貨物課宛に発出
1994年(H10年)
3月25日
国交省自動車交通局貨物課が関東陸運局に事務連絡
『廃棄物の運送については、各地方運輸局において青ナンバーの許可の必要性の取り扱いが統一されていない』 『収集・運搬行為のみを行なう場合は、自動車運送事業に該当することを統一して判断基準とする』
2003年(H15年)
3月
中部陸運局や石川県環境安全部環境整備課、さらに岐阜県環境部廃棄物対策課などをはじめとする自治体が、上記と同じ趣旨を各県の産廃協会に向けて発信 国土交通省が廃棄物処理業者の青ナンバー取得義務化に動く  → 全国清掃事業連合会ならびに全国産業廃棄物連合会に対して青ナンバー取得義務付けの申し入れ  環境省は青ナンバーが必要か否か明言せず  


実際の事件と法的論点

■ 山形県の収集業者書類送検事件(2004年) - 市から家庭ごみの収集運搬を委託されていた業者が、貨物自動車運送事業法違反の疑いで書類送検されました。
- 国交省は「一般廃棄物収集車両はトラック法の適用対象外」とする業界の主張に対し、一定の理解を示しつつも、法的整理には至らず。
- この事件を契機に、業界全体で青ナンバー取得義務が広がる懸念が高まり、廃業リスクが浮上しました。

 → 山形地検が公訴取下げということで一応の決着をみています。  

業界団体の主張

業界団体(全国清掃事業連合会など)は、地域環境保全の実態に即した柔軟な制度運用を求めて協議を継続中です。

  • 1 青ナンバー取得義務付けは、廃棄物処理法との二重規制(二重取得)になる
  • 2これまで問題や不都合はなかったのに、いまになって青ナンバーの取得を義務付ける根拠・理由が不明
  • 3 廃棄物処理法の規制のほうが厳しく、あえて青ナンバーを取得する必要はない。
  • 4 不要物である廃棄物は、有価と考えられる「貨物」には該当しないので、廃棄物収集運搬業者が青ナンバーを取得する必要はない。
  • 5 環境省から「廃棄物の運搬は廃掃法の範囲で運用されており、その車両を事業用車両(青ナンバー登録)として許可されることを要件とはしない」との見解が示されている。
  • 6 法律の一本化、又は環境省と国交省等との関係機関が調整を行なうべき。
など、主張を展開しています。

貨物自動車運送事業法改正と青ナンバー問題

貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律で、今後、無許可の貨物事業者運送業に業務を委託した側にも罰則が設けられたことから、一般廃棄物の収集運搬における、委託者であるところの市町村にも関係した議論が起こっています。
国交省がいうとおり、収集運搬のみを行う業者が一般貨物自動車運送業の許可を得ておらず無許可状態であれば、委託者である市町村も今後罰則の適用を受けるのではないか、という内容です。
国交省は、令和7年8月の法令適用前確認手続きの中で、
本件運送行為については、当該事業者が他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用し て専ら廃棄物の収集・運搬行為を行っている場合には、貨物自動車運送事業法第3条の 適用対象となりうる。 
と、これまでの主張に沿った回答をしており、
廃棄物処理事業者が自ら処理施設を保有し処理まで行うものであり、当該運 送行為が廃棄物処理業の一環として密接不可分で、その業務の過程に包摂され、独立性 を有しない場合には、貨物自動車運送事業法第3条の適用対象とならないと考えられる。 
  →中間処理施設を自前で持たず、他社へ委託するために収集運搬する業者については一般貨物自動車運送の 許可が必要となる、との見解を示しています。
また、当該運送行為を委託した者については、貨物自動車運送事業法第3条の適用対象 となる運送行為であることを知りながら、同条による許可を取得していない者に委託を行 った場合は、改正法第65条の2の適用対象となりうる。 
今後、委託者である市町村も罰則の適用を受ける、という解釈も可能であり、市町村がより慎重な対応をとる可能性があります。

まとめ

これは、安全性の確保と公正な競争環境の構築を目指す国土交通省と、廃棄物の適正処理を管轄する環境省の連携、そして業界全体のコンプライアンス意識の高まりによって是正が進められている、産業廃棄物処理業界の構造的な課題と言えます。

以前より、国交省は収運業のみの場合は、一般貨物自動車運送の許可が必要という立場です。( 自ら処理施設を有している場合は、当該運送行為が自己の生業と密接不可分であり、その業務に付帯して行われる場合は、当該運送行為が主要業務の過程に包摂しているものと認められるため許可不要)
これまで 現状では小規模零細事業者が運送業許可を取得するのは大変で、事実上あまり意味がありませんので、市町村や排出事業者が運送業許可取得までは求めないというのが合理的と考えられる状況でしたが、委託側に違法状態となる可能性が出てきたために、一廃に関して委託者である市町村が収集運搬業者に一般貨物自動車運送業許可の取得を求めてくる可能性もあります。 そして一般廃棄物の収集運搬でで市町村がそうした対応を行うなら、産廃を管轄する都道府県も横並びの対応をとる、という状況になるかもしれません。

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