Secondhand Dealers令和7年10月改正対応 古物商取引の記録方法

古物商の3大義務とは

古物商は、盗品などの不正な品物が市場に流通することを防ぎ、万が一流通してしまった場合にその追跡を可能にするという社会的な役割を担っています。そのため、古物営業法によって主に以下の3つの義務が課せられています。

  • 取引相手の確認義務(本人確認)
  • 不正品の申告義務
  • 帳簿(古物台帳)への記録義務

これらの義務を怠ると、罰則が科されたり、営業停止命令や許可の取り消しといった重い行政処分を受けたりする可能性があります。コンプライアンスを徹底し、適正な営業を心がけることが重要です。

【義務1】取引相手の確認義務(本人確認)

古物を買い受ける際は、原則として取引相手の本人確認を行わなければなりません。これは、取引の相手方を特定し、盗品の流通経路を明らかにするための重要な手続きです。

本人確認の方法

相手方の真偽を確認する方法として、以下のような身分証明書の提示を受ける必要があります。

  • 運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど写真付きの身分証明書
  • 健康保険証、年金手帳などの写真なし証明書の場合は、加えて公共料金の領収書などで住所を確認

非対面取引(宅配買取など)の場合は、さらに厳格な方法が法律で定められています。

本人確認義務が免除されるケース

以下のケースでは、本人確認義務および帳簿への記録義務が免除されます。

  • 取引の対価が総額1万円未満である場合。
  • 自分が売却した相手から、その売却した商品を買い戻す場合。

【注意】1万円未満であっても、以下の品目は盗難品のリスクが高いことから、義務の免除対象外とされています。

  • 自動二輪車および原動機付自転車(部品も含む)
  • ゲームソフト、CD、DVD、書籍など
  • そして、令和7年10月1日からは、特定の金属製品も追加されます(後述)。

【義務2】古物台帳の記録・保管義務

古物商は、取引の都度、その内容を「古物台帳」に記録し、最終の記載をした日から3年間、営業所に備え付けておかなければなりません。

古物台帳の記載事項

古物台帳には、主に以下の項目を記録する必要があります。

取引年月日 古物を買い受けた、または交換した日付。
品目 「腕時計」「ネックレス」「電動工具」など、商品のカテゴリー。
古物の特徴 ブランド名、メーカー名、型番、シリアルナンバー、色、形状、材質など、品物を具体的に特定できる情報。
数量 商品の数。
対価 支払った金額。
相手方の情報 本人確認書類に基づき、住所、氏名、職業、年齢を記録。
確認方法 「運転免許証の提示」「マイナンバーカードの提示」など、本人確認に用いた書類の種類。

古物台帳の書式サンプル

古物台帳の書式は法律で厳密に定められてはいませんが、上記の記載事項を網羅している必要があります。警察庁のサイトで配布されている様式や、市販の古物台帳ソフトなどを利用するのが一般的です。

【義務3】不正品の申告義務

買い受けた古物について、盗品ではないかという疑いがある場合は、直ちにその旨を管轄の警察署に申告する義務があります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 商品の製造番号が削り取られている。
  • 未成年者が高価な品物を大量に持ち込んできた。
  • 商品の入手経緯について、相手の説明が不自然・あいまいである。

「怪しい」と感じた場合は、安易に取引せず、警察に相談することが重要です。この申告義務は、犯罪の拡大防止と被害の早期回復に繋がります。

【最重要】令和7年10月1日施行の改正点

近年、社会問題となっている金属盗難の増加を受け、古物営業法施行規則が改正されました。この改正は令和7年10月1日から施行され、古物商の実務に大きな影響を与えます。

改正の背景

太陽光発電所の送電ケーブルや、道路の側溝の蓋(グレーチング)、エアコンの室外機などが盗まれ、金属くずとして転売される事件が全国で多発しています。こうした盗難品が古物市場へ流入するのを防ぐため、規制が強化されることになりました。

本人確認が常に必要となる品目

今回の改正により、以下の4品目が取引金額にかかわらず、本人確認と帳簿記載が義務付けられる品目に追加されます。つまり、1万円未満の取引であっても、義務が免除されなくなります。

追加品目 概要と注意点
電線 送電を主目的とする線(銅線、アルミ線など)。LANケーブルや家庭用延長コードは対象外。
グレーチング 側溝等の蓋として用いられる金属製の格子蓋。コンクリート製やFRP製のものは対象外。
エアコンの室外機 室内機の有無を問わず、室外機単体でも対象。
電気温水機器のヒートポンプ 給湯や空調に用いられるヒートポンプユニットが対象。

「金属盗対策法」との関連

古物営業法の改正と並行して、新たに「金属盗対策法」も成立しました(施行は令和8年6月頃までの見込み)。

切断された電線など、本来の用途で使えない「くず」状態の金属を買い取る場合、それは「古物」ではなく「特定金属くず」として、古物営業法ではなく「金属盗対策法」の規制対象となる可能性があります。こちらの法律でも厳格な本人確認義務が課されるため、注意が必要です。

手続きの不備と法的リスク

古物営業法で定められた義務を遵守しない場合、厳しい罰則が科せられます。

  • 無許可営業:3年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 本人確認義務違反・帳簿記載義務違反:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 不正品の申告義務違反:罰則はないが、警察からの指導や行政処分の対象となりうる
  • 品触れ(警察からの捜査協力依頼)への対応違反:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

違反が発覚した場合、罰則だけでなく、営業停止命令許可の取り消しといった行政処分を受けるリスクもあります。一度許可を取り消されると、その後5年間は再取得ができません。日々の業務において、法令遵守の意識を高く持つことが不可欠です。

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